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2008/08/29 (Fri) 22:56
禁断の政治

#19

 早速日本の国連大使が支那の同職外交官に呼び出された。非公式会談だった。支那の国連大使がVTRを呼び出してTVに映す。
 まず,米軍の爆撃映像が映し出され,その後特殊部隊が何かの建物に突入する映像が一瞬入り,今度はヘリコプターで移送される東洋人達が映し出された。東洋人達は目隠しされ,手錠をはめられて居た。そして映像が切り替わり,星条旗と一緒に東洋人達が目隠し姿で現れた。その後,日本の飯野田首相が会見を開き,支那政府を批判,アメリカ政府も安全保障理事会の席で支那を“人道上の蹂躙”と非難した。
 「何事かね。これは正気の沙汰とは思えない」
 白人から見ると日本人と支那人の違いなんぞ僅かだ。だが,アメリカ政府の職員は,似ても似つかない政治体質を理解して居る。
 「正気の沙汰では無いのはあなた方だろう。人をさらっておいて何て言い草だ」
 ...日本人から見れば,つり目で気色悪いチャイニーズと一緒にするなんてと言う思いだった。因みに,チャイニーズとは日本語読みで支那と言う表記だが,中国と言って通じる国はどこにも居ない。
 「彼らは武装して居た。自衛隊の責任だ。認めろ!」
 日本の大使は,低能な支那人が顔面に指をさして来たのが気に食わなかった。
 「人を指差すとは侮辱するにも程があるぞ...大体,どこに自衛隊が関与した証拠があるのだ?何十分でも待ってやる,持って来なさい」
 証拠を提出するのを嫌う特定アジア諸国らしく,支那人は予想もしないかの日本人の態度に慌てた。
 彼は一旦議論を中断すると,急いで北京の党幹部に連絡をとった。北京の幹部は荒々しい声だったが,動揺を隠せずに居た。
 『必ず日本政府が一枚噛んで居る筈だ!何としても弱味を見付けろっ』
 大使はおどおどしてしまった。
 「し...しかし同志,小日本人は嘘を付いて居た様には思えません。ただ日本人だっただけで自衛隊が絡んで居るとは私も思えません」
 『何をふ抜けた事を言うか。貴様は日本人のスパイなのか。このはくじょう者め!』
 北京の幹部は部下を強く罵倒した。
 そして幹部は呟く様に命じた。
 『もういい。貴様は次の段階に移れ。対日宣戦だ』
 「それでは我が人民は国連で孤立する事に...」しかし彼の声が北京に届く事は無く電話はそこで途絶えた。

 一方日本側の国連大使は,東京へ連絡して居た。
 「恐らく支那は宣戦布告して来るでしょう。私も安保理のメンバーを取り込みに回りますが,自衛隊の防衛体勢を引き上げるべきだと思います」
 電話の主が答えた。
 『そうですか。こちらでも準臨戦態勢を発動し,防空識別圏(領空侵犯しそうだと感知出来る限界線)を監視して居ますが今のところ不審な動きはありません。しかし閣下がそう仰るのなら,更に警戒を引き上げるべきでしょうな。色々ご苦労でしょうが,理事国の取り込み,何卒お願いします...』

 舞台裏で動いて居るのは彼らだけでは無かった。現在日本に居るアメリカ軍の中で最も高位の将軍が東京の某所へ寄って居た。この度横田空軍基地司令部に拝命した空軍中将である。
 「核を日本が保有し武装せよと?」
 田中はもう一度訊き返した。...そう言えば先に会合をもった国務省の職員も,反ブッシュ派として訪れて居た。もはや現政権は一枚岩では無い訳だ。
 「日本が核を持つ事を我々は期待して居る」
 空軍中将も繰り返した。
 「それはアメリカ合衆国の意志なのですか」
 田中は尋ねた。
 「その通り,アメリカ合衆国の意志である」
 「総意であるか?」
 「何を総意と言うのだ?共産主義か?資本主義か?軍至上主義か?そもそも貴国が核武装するのに我が国の意思は必要無いと思うが」
 田中は言った。
 「しかし我が国の政治は日米安保条約によって動いて来た側面がある。それを無視するなんぞ断じて出来ない」
 「未だに非核3原則なんぞとごたくを並べるつもりではありますまいな」
 田中は僅かに口に笑みをこぼし,声を上げ掛けた。
 「飯野田内閣をご存知でしょう?現在我が国は核武装,自衛隊の国軍化に向けて動いて居る。今更非核なにがしなんぞ言いませんよ。ただ我々が心配なのは,そうやって言っておいていざ武装したら安保理を敵に回さないかと言う事です」
 「その点は国務省から約束を取り付けて居る。現在,安保理で貴国の核武装に反対する国はロシアとフランスのみだ。...因みに支那は対象外だ」
 田中が再び笑い掛けた。それを封じて口を開く。
 「おかしいな,ロシアは我々との協力体制を約束してくれたのだが」
 「その点も国務省の友人から聴いて居る。恐らくデモンストレーションだろうとの事だ」
 田中は考えた。...するとロシア政府内では,日ロ協定に懐疑的な勢力と反支那派が上手く折り合って居ないと考えられた。ロシア外務省のブドレェフでさえまとめ上げられないと言う事は,最悪の事態も考慮しなければ為らない。
 田中ら特別交渉班は,ロシアで反発する勢力はシリアを支援して展開中の自衛隊を孤立させると観測して居た。そうなれば,支那を孤立させる為の全ての計画,作戦が水泡に帰す。田中は決断した。
 「こう為れば手段は選べない。貴国の国務省に日本語が流暢な黒人が居ますな」
 中将が頷くのを待った。
 「あなたも彼の側の筈だ。ならば今の状況,大統領閣下や国務長官よりご理解なさって居るだろう」
 「何をしろと...?」
 中将は訝った。日本人の言動に違和感...否(いや),大きな意味を見い出したのだ。
 「見える形でお願いしたい。―だが,テレビやラディオを通したものでは無く,ロシアの人口統計表が“適量”減る様にして欲しいのだ」
 「ソ連時代からの取り決めが...」
 中将の言葉を遮った。
 「やらないなら貴国の軍拡は終わり。あなた方の負けだ。資本主義の崩壊を目の当たりとして地獄を味わえ!」
 「待て!...時間をくれ。貴国が核武装してくれるなら人殺し位やってやるさ」
 田中は横柄に鼻を鳴らした。
 「人殺し?」
 「何と言えばいい」
 「何も言わなければいい」

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